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更新日:2016/08/29

大腸がん幹細胞を抑制する新規化合物を創出

国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人理化学研究所、カルナバイオサイエンス株式会社の研究グループは、大腸がんの発生に必須なシグナル伝達経路を阻害することができる新規化合物を創出した。大腸がんの90%以上の患者で、このシグナル伝達経路に遺伝子異常が起こることは以前より分かっていたが、治療薬として実用化されたものはまだ無かった。

わが国では年間約5万人が大腸がんで死亡し、その治療は大きな問題になっている。転移のない大腸がんの多くは外科切除のみで治癒するが、遠隔転移や術後再発を来たした患者の治療は未だに困難である。近年、多剤併用の化学療法や分子標的治療の進歩により進行例であっても2年を超える生存が可能になってきたが、治療を続けると次第に化学療法に抵抗性となり、遠隔転移のあった大腸がん患者の5年生存率は約15%に留まってしまうという。

がんの治療抵抗性の原因に、「がん幹細胞」の関与が考えられている。がん幹細胞はポンプのようなタンパク質により薬剤を細胞の外に排出し、活性酸素除去機構を持ち、冬眠したような状態で長期間潜み続けるため、従来の抗がん剤では根絶することができないといわれている。

この度、研究グループはTNIKというリン酸化酵素が、Wntシグナル経路の活性化に必要なことを発見した。TNIKは大腸がん細胞の増殖維持に必須であり、その活性を阻害できる化合物が同定できれば、治療薬になると考えられた。

国立研究開発法人国立がん研究センターとカルナバイオサイエンス株式会社との産学共同で化合物ライブラリーをスクリーニングし、徹底的な誘導体合成から最終的にTNIKの酵素活性を低濃度(IC50値21 nM)で阻害する新規化合物NCB-0846を同定した。理化学研究所はNCB-0846とTNIKの複合体のX線結晶構造解析を行い、この化合物がTNIKの酵素活性を抑制するメカニズムを明らかにした。

大腸がん幹細胞は高い造腫瘍性があり、細胞一個からでも腫瘍を再構築することができるが、NCB-0846はその働きを強く抑制することが分かった。さらに、NCB-0846は経口投与可能であり、ヒト大腸がん細胞を移植したマウスに投与すると、がんの増殖及びがん幹細胞マーカーCD44の発現が顕著に抑制されることも明らかにされた。

今回研究グループが発見した化合物は、このがん幹細胞が腫瘍を形成する働きを抑え、「がんを根絶やし」にすることが期待できるものである。この化合物が治療薬として実用化されると、従来の抗がん剤が効かなくなった患者でも、新しい治療の機会が得られる可能性がある。研究グループでは臨床試験の前段階となる非臨床試験を実施中で、今後、大腸がんに対する新規薬剤として実用化を目指していくという。
(Medister 2016年8月22日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 大腸がん幹細胞を抑制する新規化合物を創出

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