リンパ球治療の種類と効果
2)−自分のリンパ球を使用する方法−
自分のリンパ球を使用するものとしては、
1)特異性を誘導せずに活性化を行ったもの、
2)特異性を誘導して活性化を行ったものがあります。
特異性を誘導しない方法には、1980年代にローゼンバーグ博士が、開発したLAK(lymphokine activated killer)療法と関根暉彬博士が国立がんセンターで開発した活性化リンパ球療法があります。基本的に異なる治療方法ですが、混同されることが多いようです。この両方法が基本的な技術となっていますが、新しい優れた治療法である印象を与えるために勝手に名称を付けている医療機関もあります。
インターロイキン2により末梢血リンパ球を刺激して活性化したリンパ球はLAKと呼ばれ、これによる治療をLAK療法あるいは略してLAKと呼ばれます。LAK療法は、リンパ球治療の最初に検討された方法で、非常に期待された治療方法でしたが、残念ながら強い副作用の割に効果が低いという結果でした。現在、LAK療法の本体は、NK細胞であると考えられています。また、LAK療法の強い副作用は、同時に投与したインターロイキン2によるものでしたが、LAK細胞自体の副作用との誤認識もされています。
NK細胞は、外来性の病原菌やがん細胞を非特異的に破壊排除する細胞として非常に重要な機能を担っている細胞であることから、がんに対する効果が期待されていますが、その効果が客観的に証明されるには至っていません。また、NK細胞は、単球に分類され血液中に存在しますが、血管壁を通過できないことからがんの局所に到達できない問題点も有しています。
LAK療法の結果から、LAK療法だけでなく特異性を誘導しないリンパ球治全てが効果の無い治療であると医療関係者に誤認識を与えています。
活性化リンパ球療法は、インターロイキン2を使用する点では、LAK療法と同じですが、インターロイキン2と抗CD3抗体を使用してリンパ球の調製を行う方法であり、LAK療法とは明らかに異なります。活性化リンパ球療法で使用される細胞は、Tリンパ球でありLAK療法で使用されるNK細胞とは全く異なるものです。現在、最も広く行われている治療方法の一つですが、種々の抗原に反応する能力を有する多種類のリンパ球を大量に使用して治療することを特徴にしています。そのため、一回の治療で使用する細胞の数は、1×10の9乗から10乗個程度のものが使用されます。効果に関しては、一部の患者さんで、がんが消失することも報告されていますが、その頻度は必ずしも高いものではなく、大きながんに対する効果は低いと考えれれています。ただし、大きながんであっても活性化リンパ球の投与を継続することにより、その増殖を抑える効果もあるようです。細胞レベルの小さながんに対する効果は高く、肝臓がんの再発予防に対する効果は客観的に証明されています(LANCET, 356, 802-807(2000))。QOLの改善効果も有しており、高度先進医療として認められています。さらに、ほとんどの患者さんにおいてリンパ球を活性化することが可能であると言う特徴を有しています。また、インターフェロンでリンパ球に刺激を行い、効果を増強しようとする試みも行われていますが、客観的に証明されるには至っていません。
活性化リンパ球療法は、少量の血液を材料とて約2週間で数千倍に増殖させ治療に使用しますが、培養工程で人の血清・血漿を使用します。使用される血清・血漿は、臨床上に使用されるグレードのものが使用されますが、一部の医療機関での大量使用が問題となっています。そのため、無血清培養や自分自身の血清・血漿を使用して培養することも行われています。自分自身の血清・血漿であってもその中に含まれるウイルス量は日毎に大きく変動することが知られおり、自分自身の血清・血漿を使用しても、大量のウイルスを含むような血清や血漿を培養に使用した場合、培養したリンパ球に大量のウイルスが感染することも想定され、必ずしも安全である保証はありません。さらに、患者さん自身から大量の血液を採取することは、免疫能の低下を引き起こし、がんを増殖させてしまう可能性があるため、好ましい方法ではありません。また、少量の血液を材料としないで、アフェレーシスにより大量のリンパ球を採取して、これを活性化する方法もあります。この場合は、長期の培養が必要ないことから血清・血漿を使用して培養する必要がなく好ましい方法ですが、患者さんから大量のリンパ球を採取することは、やはり免疫能の低下を引き起こして、がんを増殖させる可能性があります。
特異性を誘導したリンパ球を使用してがんを治療する試みとしては、CTL療法、DC療法あるいは、がんワクチン療法があります。また、がんの局所に浸潤したリンパ球は、がんに対して特異性を有するリンパ球であると考えられ、このリンパ球は、TILと呼ばれています。いずれのリンパ球あるいは療法も特異性を有するリンパ球によりがんの治療を行おうと言うものです。TILやCTLによる治療が思ったほどの効果がなかったことから、樹状細胞を使用してより高い活性化を特異的を誘導してこれで治療を行うものが、DC療法と呼ばれています。大きながんに対しての効果が期待され、実際、一部の患者さんでは、がんが消失する場合もありますが、その頻度は、必ずしも高いものではないようです。残念ながら、現在のところ、その有効性が客観的に証明されるに至っていません。
これは、
1)特異性の誘導が必ずしも全ての患者さんで行われるわけではないこと、
2)特異性が誘導されたリンパ球全てが、がんに対して必ずしも有効に働くとは限らないこと、
3)特異性を有するリンパ球は、特定の抗原を目印にしてがん細胞を攻撃するために、抗原の発現を止めたがん細胞に対する効果が無くなってしまうためと考えられます。
また、強い特異性を誘導するDC療法では、投与回数が数回に限定されています。これは、何度もDC療法を行った場合、がんに対するトレランスが患者さんに誘導されることが考えられるためです。もし、トレランスが誘導されると、がんが消えるどころか、がんは勢いよく体の中で増殖するようになってしまいます。そのため、トレランスが誘導されないように、投与の回数は限定されています。
TIL、CTL療法は、体外でリンパ球を活性化する方法ですが、体内でリンパ球を活性化させる方法として、がんワクチンがあります。DC療法は、体外でリンパ球を活性化する場合と体内でリンパ球を活性化する場合があります。いずれの場合もどのような抗原を使用するのかが大きなポイントの一つで、現在、研究が進められています。
特異性を誘導する場合に使用する抗原としては、
1)患者さんのがん細胞あるいはその破砕物を使用する場合、
2)他人のがん細胞あるいはその破砕物を使用する場合、
3)既にがん抗原として既知のものを使用する場合があります。
そのため、手術で切除したがんがないとリンパ球の誘導ができない場合もあります。
いずれの治療方法も研究段階の治療方法で、劇的に効果を示す場合もありますが、その頻度は高いものではありません。
がんを縮小させる効果が期待される造血幹細胞の移植(ミニ移植)とDLIによるがんの治療が最も期待されるところですが、実用化されて希望する患者さんが広く治療を受けられるようになるためには、まだ数年はかかると考えられます。そのため、現段階では、がんの早期発見を行い、標準的治療によりがんの治療を行うことが最も重要なことだと思われます。さらに、手術や放射線治療、集中的な抗がん剤治療により肉眼的に見えるがんを切除・縮小させ、それと同時期あるいは治療直後から再発を防止するために活性化リンパ球療法を行うことが最も優れた方法であると思われます。 がんが肉眼的に完全に切除できない場合でも、QOLの改善や、がんの増殖するスピードを少しでも遅らせるために活性化リンパ球治療を行うことは、非常に重要なことであると考えられます。いずれにしても造血幹細胞の移植(ミニ移植)とDLIによるがんの治療の研究の進展が待たれるところです。
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