“タンサイボー”とは考えのない単純な人という意味(広辞苑)だが、もし本物の単細胞が聞いたら迷惑千万に思うであろう。小学生でも知っている単細胞の代表アメーバ(ギリシア語で変化)にしてみれば、その動き(仮足運動)がアメーバ運動の由来になっているし、細胞の中はひとつの生命体としての小宇宙をこしらえているし、“こんな精巧な生物を単細胞と卑下するとは何事だ”と嘆くに違いない。
では、単細胞から多細胞に進化したのはなぜだろう、いつ頃かと思って調べてみても判らない。どうやら手がかりとなる化石が出ないのが原因らしい。ならば想像してみよう。単細胞生物は二分裂を続け、解離し永遠に単細胞のまま(このあたりがタンサイボーの語源であろう)なのだが、解離せず癒着した状態になる変異が起こったとしたらーーーこんなストリーだろうか?ただし、癒着するには結合装置が必要であろう。私が長いこと研究してきたタイトジャンクションやギャップジャンクションは以外に原始の細胞小器官かもしれない。
こんなことで始まり真の多細胞生物到達には個々の細胞の機能分担や形態分化が必須となる。億単位の年月をかけて多細胞生物へ進化したのであろう。やっと5万年前に60−70兆個の多細胞からなる現代人が完成したといえる。しかし、多細胞生物の中にも血球という単細胞が存在し、中でも白血球はアメーバ運動をして多細胞生物の防衛任務を担っている。
単細胞が専守防衛の役割を初めて命ぜられたのは、単細胞が多細胞化した時だろう。細胞集団のなかに悪党細胞乱入をチェックするシステム(免疫機構)がないと、その後の生存・.進化が止まってしまうはずだ。生物の進化に対応して免疫機構もヒトにいたるまで、長い年月をかけて精緻化した。とはいえ相変わらず主体は単細胞なのだ。中でも単球という細胞は興味深い。ひとつは生活習慣病にかかわっている。本来免疫細胞なのだが病気を作ってしまう。その代表は心筋梗塞。
単球は血管外に抜け出すと形態と機能だけでなく名前さえ変わってマクロファージ(大食細胞)という細胞になる。同じく血管外に漏れ出した脂肪球を文字通りたらふく食べすぎ死んでしまう。この死骸の蓄積が動脈硬化のはじまりで、心筋梗塞の原因とされている。つまり心筋梗塞はマクロファージの自爆テロが原因なのだ
もうひとつ。この細胞は慢性炎症で免疫力を発揮するとき、細胞同士が手を繋ぐ(つまり多細胞化)ことや、癒合して多核巨細胞に変身することがある。原始の細胞マクロファージが容易に多細胞化する現象をみると、単細胞が多細胞化した進化の過程をあまり深く考えなくても良いのかもしれない。
最近抗癌剤は随分効くようになった。なかでも分子標的治療薬はまさに夢の抗癌剤といえる。とはいえまだ永久的な効果ではない。分子標的薬に活性化リンパ球の組み合わせに夢が広がる。このホームページに活性化リンパ球が癌細胞を攻撃する動画があります。リンパ球も手を繋ぐことがあるのか皆さんで判断して下さい。
|