15年間癌患者さんと接してきて、多くのことを学び、反省し、改善してきました。その中で論文になりにくい部分をエッセイとして書かせて頂こうと考えています。 一人の医者の意見として受け止めて頂ければ幸いです。
今の癌治療のシステム的な問題点について、癌難民という言葉がありますが、難民というのは、自ら政治的、生活的な不満を持ち自国から出る行動を起こした人たちのことです。 しかし、現状は癌治療のマニュアルから外され、保険診療として適応が無くなった患者さんたちであり、通院している病院と医師を信じて通っている人たちです。 大病院にとっては、手術や抗癌剤治療などの高額な治療が必要と無くなった患者たちで、経営的に良い顧客ではなくなっています。これらの癌患者さんは、癌難民でなく、ベンチ・ピープルというのはどうでしょうか? 米国では、入院患者をBed、外来患者をBenchといいます。 ベンチ・ピープルとは、病院の待合室で、2時間も3時間も待たされ、5分の診察しか受けられず、十分な治療や検査が受けられずに不満を持ち、顔もあまりみないで、カルテみて、じゃあ、2週間後にきてくださいと、病状もよく聴いてくれない人たちです。検査や治療がほとんどなく、病院に待合室のベンチに座るためにきているような人たちのことです。この人たちは、このような通院が続いた上に、検査で再発がみつかると、紹介状を書きますから、ホスピスの予約待ちをしてくださいといわれ、この待ち時間が癌難民という状態でしょう。
病院には、病床数、医師数、看護師の人数など許容があり、厳しい病院経営という状況では、ベンチ・ピープル達は、医師にいわれた通りにがんばって通院し、座りごこちの悪いベンチに2時間も3時間もすわり、文句も言わずに通い続け、検査も少なく、これらの患者は大病院でリストラにあうように、「あなたには、治療がありませんので、緩和治療に行きますか、紹介状を書きますから他の病院を捜してください」とその医師が言う。まるで、子会社に転職するか、職安に行くかという突然の通告である。 その医師も悪意は無く、病院の立場上は正しいことを言っているし、同じ立場なら私もそうします。 だから、医師も病院も悪くはない。しかし、リストラされたベンチ・ピープルは、今まで信じていた主治医と病院から見放され、病状が進み、不安が強くなり、通院を続けていても、形式上の主治医はいても、十分な治療をしてくれない窓際の患者として扱われる。そして、更に癌が進行しています。そして、ホスピスの待ちの癌難民になっていくシステムです。
これは、システムの欠損で、大学病院やセンター病院の近くに昔は中小病院があったため、中期間の入院が可能であり十分な治療を行えたが、この中小病院を医療制度の改革で癌患者が入院できない状態にしてしまった。 医療制度改革は、全体では良いと考えていますので、この弊害が出たというのが正しいでしょう。 この欠損について、万全の政策は無いですが、一部の患者さんを救うことはできると考えています。
1つは、私は保険診療外の免疫療法を行っています。この治療は、抗癌剤との相性が良く、抗癌剤が耐性の癌と考えられていた患者さんに、同じ抗癌剤と免疫療法を併用し効果を示すことが多く、このため、免疫療法を併用することで、リストラされた病院で再度治療できるようになりました。患者さんの中には、まだ、大学病院で久しぶりに会った看護師さんにホスピスに入院していなかったの?といわれも人もいます。患者さんは、元気で普通に生活しているのになんでホスピスにいかなきゃいけないの!と私の外来で愚痴を言っている患者さんもいます。 現状で、なかなか免疫療法と抗癌剤治療の連携が上手くいかないのは、免疫療法の医師の説明不足と論文の少なさです。このことに対して、今後努力していき、抗癌剤の先生たちと少しでも癌患者さんのために、積極的治療を続けていけ、延命よりも、治癒にもっていける方向に治療していきたいと考えています。
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